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2009年05月10日

東京女子大「旧体育館」 なぜ壊すのか

  『東京女子大「旧体育館」解体』 『やまぬ「待った」の声』 

  2009年5月9日(土)の朝日新聞夕刊(東京版)に、上記のような見出しの記事があった。
  解体の予定が迫っているこの体育館に、学内からは教職員有志や学生、学外からは建築家団体はもちろんのこと、この大学の地元杉並区長や区内の市民グループ、また文化人らの緊急アピールなど、保存を求める声が続いている、という内容。
  写真も掲載されていて、これは珍しい写真で、2階バルコニーのもの。

  この記事でふれている教職員有志が開いた3月14日の公開シンポジウムに、わたしも誘われて行ってみた。女子大の先生方のスピーチには、解体を決めた理事会に対し、学内でなんとか話し合いを持とうとしてきたが、ことここに至ってやむなく、学外を助力を求めるという苦渋の決断を感じた。
  参加者には、卒業生だろうか、杖をついた婦人の姿も。

  プログラムに予定されていた「キャンパス整備計画について」は、理事会側からも、請負業者三菱地所設計からも出席がなかったのは残念。

  アントニン・レイモンド設計、1924年完成のこの建築物について、そのこまやかな美しさについて、詳しいことは朝日の記事でも他のサイトでも読むことができるので省略するが、このシンポジウムで得たことは以下の点である。

  永年、そして現在も使用している、運動科学研究室の先生の証言。もう一つの体育館に比べて、はるかに使いやすい。落ち着く雰囲気がある。

  学生論文の課題に選んだ卒業生と、志を継ぐ在校生の「ここがあるおかげで、建学の精神にふれることができた」という証言。
  単なるモノではない、具体化された精神がここにはあるのだと実感した。

  理事会側が主張する解体の必然性は、専門家の先生の綿密な理論で全て論破できることもわかった。

  もうひとつ感じたことは理事会の閉鎖性。学内の教職員も、充分理解できる説明を受けていないようだった。

  また、提案された未来予想図のなんと夢のように楽しげだったことか。
  考える態度さえあれば、まだまだプランは広がるのである。


  東京女子大学理事長 原田明夫 様
  東京女子大学 学長  湊 晶子 様

  朝日新聞の取材に対する「解体は不可避」との理事長のお言葉を拝見しました。さまざまな分野からの保存の要望に対し、ご一考をされないのが残念です。
  なぜ立ち止まって考えられないのでしょうか?
  歴史は過ちを犯し、そしてそれを正して進んできたのではありませんか?
  全てについて「機関決定」だから変えられない、のであれば、過ちは過ちのまま、進歩はありません。

  理事長はやはり上記の記事で「将来像をにらみ生まれ変わっていかねばならない」と言っておられます。それは、新しい校舎だけのことでしょうか。
  教職員との信頼関係なしに、よい将来像が描けるとは思えません。学生に日々接するのは先生方でしょうから。

   何が大学を束縛しているのでしょうか。
  「待ったの声」を耳をふさいでおられる、聞こえなくしているのは何ですか?
  工事の請負元の三菱地所設計さんも建築に携わる企業さんですから、価値はよくわかっておられるはず。「こうならできますが?」などのご提案はないのでしょうか?

  業者さんとの契約についても、公開されれば、解決の道は得られるのではないのでしょうか。
  なぜか閉鎖的なのが気になります。

  「待ったの声」に気づいてください。
  緊急アピールに誠意あるお返事をなさってください。
  教職員に学生に卒業生に、関心を寄せる世界中のみなさんに、説明をなさってください。

  よきニュースを心からお待ちしております。

インターネットというものの性格上、当方の身分を明かさずに、理事長様、学長様の個人名あての文書をお詫びします。
信頼できる方法があれば、いつでも名乗ってお叱りをお受けします。

                                           きさら先


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投稿者 きさら先 : 2009年05月10日 18:50